最近、また非常に残念で、かつ憤りすら覚えることに出くわしました。
とあるマンションの通常総会資料に目を通す機会があったのですが、そこに添付されていた「長期修繕計画」なるものを見た時、目を疑い愕然としました。

その「長期修繕計画」と名付けられている表とグラフは、当該総会の会計年度の翌年からいきなり修繕積立金会計の収支がマイナス(赤字!)になり、翌々年には大規模修繕工事が予定されさらに赤字を大幅に拡大したのち、計画期間末の30年後まで、12年ごとに大規模修繕工事を予定しながら、延々と赤字を累積し続ける内容となっているではありませんか!

繰り返しますが、これが、総会議案書に添付されている「長期修繕計画」なのです。

では、この資料、誰が作成したのでしょう?
この表には表紙がついており、そこに「長期修繕計画のご提案」と書かれ、管理会社(いわゆる大手!!)の名前が記載されています。その会社のホームページには、管理のための専門性をアピールする美辞麗句が並んでいます。

あり得ません・・・・。

「長期修繕計画」とは、将来予定される修繕工事等を計画し、そのために必要な費用を算出し、それを賄うための月々の修繕積立金を算出するために作成するものです。そして「計画」である以上、一定期間ごとの見直しを行いながら、基本的にはその実現を目指すものであるはずです。
この管理会社は、管理組合に「翌年から赤字の累積を目指しましょう!」と「ご提案」しているのです!

お分かりかと思いますが、これは「長期修繕計画」ではありません。
では、この「ご提案」されているものは、一体、何なのでしょう?

これはただのシミュレーションでしかありません。表計算ソフトで機械的に数値を入力し、グラフを出力させただけのシロモノでしかないのです。

管理組合がマンション管理に無関心になってしまうと、管理会社はここまで恐ろしいことを平気でやるのかと、改めて目の前が暗くなりました。

このマンションの実情はあまり知りませんが、どうやら管理会社が大手であることから、信頼しても大丈夫と思い込んでいる可能性があります。
マンション管理士仲間では常識となっている「管理を、決して管理会社任せにしてはいけない」という鉄則に気が付いていない、潜在的に大きな問題を抱えたマンションが、まだまだたくさんあることを推測させる出来事でした。

投稿者プロフィール

木村誠司
木村誠司
28年間、地方公務員として、建築、都市計画、住宅、開発行政に従事。
自らが居住していたマンションで大規模修繕工事、管理委託契約見直しに尽力。
平成27年6月独立開業。マンション管理士・一級建築士