2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて外国人観光客の宿泊施設を確保するため、国が国家戦略特区によりいわゆる「民泊」を進めようとしています。(国家戦略特別区域法では「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」という長い名前がついています。) また、これを受けて東京都大田区や大阪府でも、この特区制度により「民泊」を認める条例制定の手続きが進められています。

「民泊」とは、戸建て住宅やマンションの空き部屋を活用し、有料で外国人の旅行客を宿泊させる事業のことですが、このところの外国の民泊紹介サイト物件の急速な拡大や、それら物件でのトラブルの表面化により、マスコミに取り上げられることが増えてきたようです。

こうした状況をみて、分譲マンションの管理組合でも、空き室においてこのような事業が行われ、ルールを守らない外国人によってトラブルが発生することを懸念する声が上がるようになってきました。

そのようなご心配をされている管理組合の皆様には、自分たちのマンションのルールである管理規約に「専有部分の用途」を定める規定があるかどうか、確認することをお勧めします。

国土交通省が定めているマンション標準管理規約の第12条では、「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」としています。標準管理規約に準拠して管理規約を定めているマンションには、この規定があるはずなので、そこでは「民泊」はできない、と解してよいと考えます。

「民泊」は「滞在に必要な役務を提供する事業」(上記法第13条第1項)であって、明らかに「住宅」としての使用ではないからです。

ただし、これをきっかけに、改めてこの条文について、マンション内広報などで組合員の方々に周知を図ることも必要かもしれません。

また、標準管理規約に準拠しておらず、上記条文が管理規約にない場合は、組合内で議論をし「民泊」に対するスタンスのコンセンサスを図るととともに、規約の改正を検討してみてはいかがでしょうか。他の条文においても標準管理規約との違いが見つかり、規約の見直しのよい機会になるかもしれません。

〈追記〉H28.1.12

「民泊」に関して、石井国土交通大臣が標準管理規約の規定について見解を示したとの記事が、マンション管理新聞(平成28年1月5日第993号)に掲載されました。その見解としては、上記のとおり、「専有部分の用途を住宅に限定している規定が管理規約にある場合で、『特区民泊』を実施するには、管理規約の改正が必要」とのことです。

この見解は当然のことと考えますが、気になるのは記事の後半です。国の特区ワーキンググループの有識者委員から「『特区民泊』は標準管理規約上の『住宅』に含まれるとの通知を発出すべき」との意見が出された、とされています。この意見は私には「ご都合主義」としか思えません。結果的に国土交通省がどのような通知を発出するかはまだ分かりませんが、今後も状況を注視していく必要がありそうです

〈追記〉H28.6.27

「民泊」について(その2)をアップしました。

投稿者プロフィール

木村誠司
木村誠司
28年間、地方公務員として、建築、都市計画、住宅、開発行政に従事。
自らが居住していたマンションで大規模修繕工事、管理委託契約見直しに尽力。
平成27年6月独立開業。マンション管理士・一級建築士