このブログでもたびたび記載してきました「マンション管理計画認定制度」ですが、既に公表されているとおり、本年(2022年)4月1日より、法律の施行により制度自体は開始されています。
しかし、実際に行政に認定申請をするためには担当する役所(マンションの所在する市又は都道府県)が、その認定事務(認定申請の受付)を開始していなければなりません。これは各行政の判断に委ねられているため、全国一律ではなく、マンションの立地している区域の役所によってまちまちとなっているのが現状です。因みに神奈川県では本年4月から受付開始、横浜市では本年11月から、川崎市では来年4月から申請受付開始予定と聞いています。

実はこのマンション管理計画認定制度についてですが、約2年前の本ブログで「その認定を取得することにどれだけのメリット(インセンティブ:動機付け)を与えられるかが、制度活用の鍵」、「余程のメリットがないと認定を受ける管理組合がなく、制度自体が空振りに終わる懸念があります」と書かせていただきました。

ではこの2年間でどのようなメリット(インセンティブ)が付与されたでしょうか。現在、私が確認できているメリットは、住宅金融支援機構の➀フラット35(固定金利の個人向け住宅ローン)の金利優遇、②マンション共用部分リフォーム融資(大規模修繕工事の際の借入融資)の金利優遇、③マンションすまい・る債(管理組合の積立債券)の利率優遇、の3つです。
これらの優遇はそれぞれ誰に恩恵があるか、ですが、ざっくりいうと、①は新たに住戸を購入する方の優遇、②は大規模修繕工事で融資が必要な管理組合、③は債券を買うだけの余裕がある管理組合、です。ということは、管理計画の認定を受けられるほどの管理が行われているマンション管理組合にとって、直接的なメリットとなるのは③くらいしかない、ともいえます。(ただし、管理を適正に行っていてもすまい・る債を購入していなければ直接的メリットはなし)

やはりこれでは制度活用のインセンティブとしては弱すぎる、と言わざるを得ません。制度本来の目的はマンションの管理水準の維持向上と、適正に管理されたマンションの市場での評価だと思いますが、この状況では認定を取得しようとする管理組合も限定的にしか現れないのではないでしょうか。
実際には国もその点は認識していたはずで、実は少し前に、認定を受けたマンションが大規模修繕工事を実施した場合の固定資産税の優遇が検討されているとの情報が出てきました。近年の建築関係の認定制度での優遇措置は、金利、税制、容積率、それから補助金(助成金含む)と、メニューがほぼ決まっていますので、管理計画認定制度でも、やはりインセンティブを与えるには税制優遇は欠かせないツールだと思われます。

現時点ではまだ国土交通省が税制改正要望として発表した段階で、今後具体的に施行されるまで期間が掛かりそうですが、これからの優遇措置拡大に大いに期待したいところです。

投稿者プロフィール

木村誠司
木村誠司
28年間、地方公務員として、建築、都市計画、住宅、開発行政に従事。
自らが居住していたマンションで大規模修繕工事、管理委託契約見直しに尽力。
平成27年6月独立開業。マンション管理士・一級建築士