もうおそらくこのページをご覧のほとんどの方がご存知のように、本年(2016(H28)3月14日、長年にわたり話題とされてきた標準管理規約の改正が国より通知されました。

今回の改正において特に話題となったことの一つが、いわゆる「コミュニティ条項の削除」です。この話題は、これまで関係者の間で盛んに議論されてきましたので、今更感が無い訳ではありませんが、先日(4月23日)、日本マンション学会の千葉大会に参加した際、とても有難い見解が早稲田大学の先生から示されたので、記事にすることとしました。

私の認識では、そもそもこの問題は国土交通省が平成24年に設置した「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」の議論から端を発しています。検討会で「自治会と管理組合が混同して運用されていることによって全国で混乱が起きている。よって、コミュニティは非常に重要であるけれども、標準管理規約の27条及び32条からコミュニティ条項を削除すべきである。」という委員の意見があり、結果的に同検討会の報告書もその方向でまとめられ、最終的な標準管理規約の改正に至ったという経過だと思っています。(短絡的な理解かもしれませんが。)

私がここで奇異に感じるのは、「全国で混乱が起きている」という現状認識です。検討会資料には私の見た限りその全国の混乱状況を示す統計資料などは見当たりませんでした。(裁判例は複数示されましたが「全国での混乱」を示す資料をどなたかご存知ですか?)

国が改正案のパブリックコメント(「パブコメ」)を行う前から、複数のマンション関係団体がこの検討会の報告書等に対し、反対意見等を国に提出したり、声明を公表したりし、またパブコメでは合計760件もの意見が国に提出されたとのことです。

また、改正規約の公表後、一部のマスコミがマンション管理費は「夏祭り」の費用には充てられないようにした、と報じました。この報道に対し、先述した教授は学会の論文(日本マンション学会誌「マンション学」第54号P43~)で「マンションないし団地で開催される「夏祭り」や「餅つき大会」等の催事は、(これまでどおり)管理組合の業務として開催することができる」としています。

私には、このような状況こそが「全国で混乱が起きている」というのではないかと思えます。マスコミの報道を、区分所有法の第一人者である学識経験者の先生が敢えて打ち消さなければならない事態は「混乱」以外何物でもないのではないでしょうか。

このことは即ち、今回国が標準管理規約のコメントでつらつらと書き綴った文章を読んでも、「混乱」は収まらなかった(却って混乱した?)ということだと思います。

この件については書き始めるともっと思うところはありますが、長くなったので、このくらいにします。

今回の学会における大学の先生の論文で、現場の管理組合における「混乱」が少しでも収まるよう、自分も微力ながら協力できたらと思う次第です。(言葉足らずで私のコメントにより「混乱」を引き起こさないことを願います。)

注)紹介した先生のご見解については、上記論文を直接お読みください。ここではごく一部しか引用していませんので、誤解のないようお願いいたします。

投稿者プロフィール

木村誠司
木村誠司
28年間、地方公務員として、建築、都市計画、住宅、開発行政に従事。
自らが居住していたマンションで大規模修繕工事、管理委託契約見直しに尽力。
平成27年6月独立開業。マンション管理士・一級建築士